9条改憲、国民の理解が大前提

毎日新聞「デジタル毎日」インタビュー 2018年6月13日配信

◎国民投票は高いハードル
 憲法9条1項、2項はこれからも堅持していくというのが公明党の立場だ。これを変えることがあってはならない。
 そのうえで言えば、憲法改正、特に9条の改正というのは容易なことではない。改憲発議にあたっての衆参両院の3分の2以上という要件自体も大変なハードルだが、国民投票もそれ以上に高いハードルだ。国民投票にかけたが否決された、というようなことはあってはならない。
 だから国会の中で可能な限り幅広い合意形成は必要だし、国民投票で間違いなく大多数の国民の賛同がえられるという確信をもてなければ、改憲発議などできない。
 憲法を変えるならば、条文が適切なものであるべきことは当然だ。それとともに最終的には国民が決めるものである以上、国民の理解を得る努力をしていくことが不可欠になる。

◎「自衛の措置の限界」を明確化した平和安全法制
 2015年に平和安全法制が成立した。この法制を作るまでに2年近い議論を重ねている。そのなかで一番重要だったのは「自衛の措置の限界」は憲法上、どこにあるのかという議論だった。
 この議論によって、9条のもとで許される自衛の措置(武力の行使)の限界を明確にした。従来の政府見解をふまえて、論理的な整合性を持つ形で明確にした。この範囲を超えるようなものについては、憲法改正が必要だと、当時の閣議決定にも明記されている。
 平和安全法制で定めた現在の9条のもとで許される「自衛の措置の限界」については、我々はこれからも維持されなければならないと考えている。9条改憲についてはこの限界を維持するという前提のもとで、条文も考えるべきだ。このことについては、我々と議論を積み重ねてきた自民党幹部も同じ認識を持っていると考えている。
 だから、平和安全法制で定めた限界を超えることを、憲法を改正して認めるということには明確に反対だ。また、拡大解釈の余地が残る条文になったり、国民にそのような誤解を与えるような条文になってはならないことも当然だ。

◎自衛隊の役割はますます重要に
 国民投票によって決する憲法改正にあっては、国民に理解してもらい、納得してもらうということが一番大きな課題だ。自民党の憲法問題に関わっている議員と話す際には、私自身も常にその点を強調している。
 今、北朝鮮問題をはじめとして、中国の海洋進出や軍事力の増強が続き、アジアの国際情勢は予断を許さない。そのなかで日本の自衛隊の役割と責任は極めて重要になっている。
 また、災害時には地域の住民のために献身的に活動している。阪神大震災時に自衛隊に出動を要請するかどうかということを内閣が議論していた時代があったことを考えれば、自衛隊に対する理解は国民のなかで本当に広がっている。
 そうしたなかで自衛隊を憲法に明記するという趣旨については理解できる。ただこの問題は短兵急にやるべき問題ではない。自衛隊が大きな役割を果たしているとして、そのうえで憲法を改正する必要性を国民に十分理解してもらうことが必要だ。その意味ではそれなりの時間はかけてしかるべきだと考えている。

◎時間をかけて理解を
 私は、平和安全法制に深く関わった一人として、本当に作っておいて良かったという実感を持っている。平和安全法制によって日米同盟関係は強化され、信頼関係も強くなった。そして信頼関係が強くなったことによって、極めて機微な軍事情報もこれまで以上に日米で共有されるようになった。日米の共同訓練も非常に円滑に実施されるようになった。
 そうしたことをふまえれば、当面一番重要なことは、平和安全法制の適切な運用を積み重ねていき、国民の信頼を得ていくことだと考えている。  日米の連携を含め、平和安全法制に基づいた着実な自衛隊の運用を続けることで、国民の理解が増し、重大な責任を背負っている自衛隊については憲法にきちんと書き込んでいったほうがいいのではないか、という認識が広がるようにしていかなければならない。そのためには十分、時間をかける必要があると考えている。

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