野党巻き込んだ議論を

5月4日(土)付・読売新聞4面「憲法考」 北側一雄党憲法調査会長インタビュー記事

◎国会での憲法論議の現状をどう見ているか。
 静かな環境下で論議を積み重ねていくことが大事だが、野党が消極的で、この数年なかなかできていない。非常に残念だ。
 継続審議となっている国民投票法改正案は投票の便宜を図るものだ。野党も全く異論がないと思うので、今国会でぜひ成立させたい。野党が主張する国民投票運動中のCM規制も議論すればいい。ただ、表現の自由は最大限尊重すべきで、過度な規制はいかがなものかと思っている。例えば、政党間で自主規制することも考えられるのではないか。

◎自民党は憲法改正案を衆参両院の憲法審査会に提示したいと訴えている。
 自民党は苦労して4項目の改正案をまとめたのだから、憲法審査会で意見表明してもらえばいい。それで一気に憲法改正に向けて進むとは、とても思えない。我々も相当、問題点が多いと思っている。
 改正案のうち「教育の充実」の趣旨は全くごもっともだが、幼児教育の無償化が今年10月に始まり、高等教育の学生支援も来年4月から大幅に拡充される予定だ。実際に施策が進んでいる中、憲法に規定しなければならないのか疑問に思う。
 自衛隊の明記案も改正の必要性がどこまであるのかという問題がある。自衛隊に対する国民の信頼は非常に高く、違憲と思っている人は極めて少ないからだ。
 我が国の防衛は日米防衛協力体制を基本としている。2015年に安全保障法制を整備したことで日米同盟は間違いなく深化している。法制を着実に運用して実績を作ることの方が大事だ。

◎公明党が重視する憲法改正の論点は何か。
 甚大な災害が起きた時の国会議員の任期延長問題は議論の余地がある。阪神・淡路大震災や東日本大震災はともに統一地方選を控えた時期で、被災地では地方議員の任期を延長し選挙を延期せざるを得なかった。当時は特例法で対応したが、国会議員の任期は憲法に規定があり、任期満了で失職する。緊急時こそ国会が機能しなければいけない。
 地球環境の保全も非常に大きな課題だ。我々には次の世代に良好な地球環境を引き継ぐ責務がある。何らかの規定を憲法に入れることは十分議論に値する。

◎第一章の天皇条項に対する考え方は。
 象徴天皇制は国民に広く定着しており、第一章を変える必要性は全くない。ただ、皇位継承の安定は極めて重要な課題だ。国民の理解を得つつ、冷静に議論していく必要がある。

◎夏の参院選後の憲法論議をどう見通すか。
 憲法論議の観点だけで言えば、「改憲勢力」が憲法改正の国会発議に必要な3分の2の議席に届かず、野党側が「自分たちが賛成しなければ国会で発議できない」という状況になった方がいい。「改憲勢力で3分の2」と言うから、野党は政局や国会対策で利用する。
 大事なことは野党を巻き込んだ形で論議を進めていくことだ。幅広く合意を形成できるようにしていかないと、憲法論議は前に進まない。

※国民投票法改正案とは
憲法改正の賛否を問う国民投票に、国政選挙などと同様に投票しやすい制度を導入する案。商業施設などでの「共通投票所」の設置や洋上投票の対象者の拡大など7項目ある。自民、公明、日本維新の会、希望の党の4党が昨年6月の通常国会に共同提出した。昨年の臨時国会を経て今国会に継続審議となっている。

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