重要土地利用規制法案の必要性 

 毎日新聞の電子媒体である「政治プレミア」に、5月28日に掲載された北側一雄副代表の寄稿は以下の通りです。

安全保障と私権の両立を
重要土地利用規制法案の必要性

今までなかった制度
 政府が国会に提出した審議中の重要土地利用規制法案は、防衛関係施設や国境離島などについて、安全保障上の観点からの機能を維持し、その機能を妨害しようとする動き(機能阻害行為)を防止することを目的としている。国は該当施設周辺の土地利用を調査・規制できるようになる。安全保障の観点から土地や建物の利用を規制し、土地や建物に関する情報を一元化する制度は、今までなかったものだ。日本の防衛のために重要な制度であり、本来ならもっと早く同趣旨の法律があってしかるべきだったと思う。ぜひとも今国会で成立を期したい。
 法案では、調査・規制の対象を重要施設の周囲1キロや国境離島とし、国はその中から「注視区域」を指定して土地の利用実態などを調査できるというものだ。機能阻害行為が見つかれば、罰則付きの中止勧告や命令を出せる。さらに、特に重要なものを「特別注視区域」とし、200平方メートル以上の土地、建物の取引の事前届け出を義務づけるなど、より重い規制をかける。安全保障の観点から考えれば、必要な制限と言えるだろう。

「安全保障」で全てが許されるわけではない
 しかし、「安全保障上の観点」という旗を掲げたら何でもできるというのは間違いだ。区域に指定されれば制限がかかるのだから、当然、経済活動や該当区域の住民への影響は避けられない。国民の私権を守るのも政府の役目だ。安全保障と私権のバランスを取っていく必要がある。
 法案で重視したいのは第3条だ。第3条は同法案に基づく措置の実施に関して「個人情報の保護に十分配慮」し「必要最小限度」となるよう義務づけている。第3条はこの法案の総則であり、全体を縛る。過度な私権制限をさせないためのものであり、政府に遵守を強く求めていかねばならない。

経済的社会的観点
 対象となるような施設などはさまざまな機能を持っており、書き込むのは容易ではないため、法案にはどこを「注視区域」や「特別注視区域」に指定するかは書かれていない。法案成立後に政府が作成する「基本方針」に基づき、具体的な指定をしていくことになる。
 この過程でも過度な私権制限にならないようにしなければならない。このため、公明党は与党協議で、基本方針に関し「経済的社会的観点から留意」するとの規定を盛り込むよう求めた。そして実際に法案に書き込まれた。
 区域に指定されるのは都市部もあれば地方もある。実際にどういう利用状況になっているか、海に近いのか、山の奥なのか、市街地なのか。安全保障上の必要性を踏まえる一方で、経済的、社会的、地理的状況を総合的に勘案し、その地域の住民や事業者に過度な負担とならないよう考慮する。具体的な地域は政府が最終的に決めることだが、この留意事項は極めて重要だ。
 なお、対象区域が法案に盛り込まれていないことから「政府の恣意的な運営につながる」との批判もある。だが、基本方針は閣議決定されるものだ。当然、政府が示す案について与党による事前審査が行われ、その過程はオープンなものになるだろう。事実上、野党をはじめ国内からさまざまな意見が出されることになり、我々与党もそれらを踏まえて審査することになる。決して密室で決めるということではない。

「土地利用」に限定された調査
 「調査」についても触れたい。政府は、不動産登記簿や住民基本台帳など関係省庁や自治体が持つ公簿情報を収集したり、現地で調査したりすることができる。また、確認の必要があると判断した場合は、所有者や利用者から報告や資料提出を求めることもできる。重要なのは、法案が規定する「調査」は、全て「土地利用」に関することと限定されていることだ。調査の目的は、安全保障上の観点から重要な施設などの機能阻害行為を防ぐことにある。思想、信条などを調べなくても、十分、目的を達成させることができる。仮に土地利用に関すること以外を調べたならば、それは明確な法律違反だ。
 安全保障上の観点と私権は、どちらを重視するかという話でもなく、二つが求める真ん中であればいいというものでもない。両方重視し、両立しなければならないことだ。両方しっかり見た上で、安全保障上の目的を果たし、かつ、私権の過度な制限にならないようにしなければならない。それを責任を持って判断するのが政治だ。この法案は、その際に恣意的、裁量的にならないよう、できる限り制度として書き込んだものと言える。


※毎日新聞「政治プレミア」に掲載されたページはこちらhttps://mainichi.jp/premier/politics/articles/20210527/pol/00m/010/005000c

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