憲法改正を聞く

日本経済新聞 インタビュー記事 2月4日付・4面掲載

憲法改正を聞く
北側一雄・公明党憲法調査会長
緊急時の議員任期延長を
国会機能維持 国民も関心

 今国会で衆参両院の憲法審査会を定例日に週1回開くべきだ。憲法改正に関する世論を喚起していくためにも予算委員会の有無にかかわらず開催するのが望ましい。
 衆院憲法審を巡っては自民、公明両党と日本維新の会の幹事が出席した2021年12月の懇談会に国民民主党の玉木雄一郎代表が初参加した。野党でも憲法審を開くべきだという機運が高まり開催頻度の向上を後押しするだろう。
 立憲民主党もこの流れに対応せざるを得ないのではないか。維新や国民に呼応しないとどんどん孤立してしまうはずだ。立民は政策立案型を掲げる泉健太氏に代表が交代し憲法への考え方も変わることを期待したい。
 具体的な改憲項目の議論は国民の関心が高いテーマを優先する。日本で改憲の国民投票はやったことがないからなおさらだ。
 その点、大災害などの緊急時に国会の機能をどう維持するのかは国民も関心を持っているように思える。改憲論議を詰めていく最初のテーマにふさわしいと考える。
 背景として新型コロナウイルスの感染拡大が現実に起こった。これからどういう感染症が広がるかもわからない。日本は阪神大震災や東日本大震災など大災害を何度も経験した。豪雨災害は毎年頻発し甚大化している。
 こうした時に国会議員が国会に集えない場合もあり得る。それでも国権の最高機関である国会の機能は維持しないといけない。原則は国会に集まって審議し議決するが、例外的にオンラインでの審議や議決を容認するのは憲法上可能だと思う。
 仮に首都直下型地震がすぐにでも起こったらどうするのか。これは喫緊の国家の危機管理そのものだ。
 国難と言える緊急事態が生じたときに国会議員の任期の延長を認める改憲は議論に値する。参議院の緊急集会との関係、任期延長の要件や手続きをどう定めるのかなど論議を積み重ねたい。 一方、大災害時などに政府の権限を強める緊急事態条項の創設は慎重に考えたい。
 国民の移動や営業の自由を制約する根拠を新たに設けるべきだという議論があるが、すでに「公共の福祉」による一定の制約はある。これに代わる言葉を盛り込むとしても抽象的にしか書けないはずだ。それにどれほどの意味があるのだろうか。
 緊急事態には感染症や自然災害、原子力災害、場合によっては武力攻撃事態もあり得る。こうした時に自由を制約する手続きやその範囲、具体的な補償は憲法に書き込めない。
 災害対策基本法や感染症法など個別の法律に不備があるなら改めてそれぞれの法律に書き込むしかない。
 急速に進むデジタル社会で個人情報やプライバシーをどう守っていくかや、必要な情報にアクセスできる権利は憲法に書いてもよい。デジタル社会での人権保障や民主主義のあり方を憲法に規定するための議論には価値がある。
 環境問題を巡っては国や国民が次の世代に環境保全の責務を負うとの規定が憲法にあってもおかしくない。環境権という権利ではなく将来への責任として明記を望む。

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