平和安全法制で抑止力強化
平和安全法制で抑止力強化
日米同盟の信頼性が向上
5月19日の衆院憲法審査会で北側一雄副代表が発言しました。その要旨は次の通り。
公明党の北側一雄です。
先週、私、平和安全法制についてのお話をさせていただきました。今日も、少しそれに付加して意見を述べたいと思います。
平和安全法制は、二〇一五年の五月に国会に提出されました。そして、その年の九月に法案が成立をしたわけでございます。そして、二〇一六年、今から六年前の三月に法施行がなされております。
この平和安全法制全体の出発になるものは、平成二十六年、二〇一四年の七月一日の閣議決定にあります。この閣議決定を作るに当たっても、政府、そして自民党、公明党、相当綿密な議論をさせていただいて、この閣議決定を作らせていただきました。今日は、事務局が作っていただきましたこの資料の中の三十ページ以降に全文が出ておりますので、また機会あるときに改めて読んでいただけるとありがたいと思っております。
今日、私がお話ししたいのは、その中で二点でございます。
一つは、安全保障環境、我が国をめぐる安全保障環境というのが大きく変化をしている。これは恐らく今日いらっしゃる皆様も御理解されておられますけれども、そのことについてもこの閣議決定の中で書かせていただいております。
この三十ページの、七月一日閣議決定の最初の方に書いてあるわけでございますが、その第二段落のところなんですけれども、「冷戦終結後の四半世紀だけをとっても、グローバルなパワーバランスの変化、技術革新の急速な進展、大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発及び拡散、国際テロなどの脅威」、さらには、「海洋、宇宙空間、サイバー空間に対する自由なアクセス及びその活用を妨げるリスクが拡散し深刻化」、このように書いております。こういう安全保障環境の認識がまず大前提にあります。
現実問題、我が国をめぐる周辺の国々の動向を見ますと、これまた言うまでもございませんけれども、北朝鮮は、今年に入って既に十四回、ミサイルの発射実験をしております。報道によれば、核実験もするのではないか、このような報道もなされているわけでございます。中国も、軍事力を年々強化いたしまして、海洋進出を強めております。ロシアも、私ども日本の隣接する国でございます。
こういう中で、先ほど申し上げた、安全保障環境が軍事技術の高度化等々大きく変化をしてきている中で、我が国と国民をどう守っていくのか、それも憲法九条の下で現実にどう守っていくのかというのが今問われているんだと思っております。
もう一点お話ししたいのは、やはりこの時代は、一国だけで自らの国を守るということはできない時代になっていると思います。先ほどの閣議決定の中にも触れているんですけれども、同盟関係を結び、そして自らの国の安全を確保していく。どの国でも、そういう考え方に立って、安全保障そして防衛ということを行っているわけでございます。
一番典型なのは、NATO、北大西洋条約機構。現在、三十カ国が加入をされていらっしゃいます。御承知のとおり、残念ながらウクライナはこのNATOに加盟をできませんでした。今、御承知のとおり、フィンランドやスウェーデンが、昨日でしたでしょうか、このNATOへの加盟申請を、長年の彼らの軍事的な中立という立場を変更して、NATOへの加盟申請をしているという状況下にあるわけでございます。
翻って我が国はどうかというと、まさしく日米同盟です。日米安全保障条約の下で、日米同盟の下で我が国を守る、この国を守るというのが、基本的な私たちの安全保障政策の根幹にあることでございますけれども、今、こういう安全保障環境が厳しくなる中で何をしなければいけないかというと、私は、この日米同盟の信頼性というものをさらにさらに強化をしていくということが極めて重要なんだろうというふうに思います。日米同盟の信頼性を大きく向上させて、そして抑止力を強化していく、そのために何をしていくのか、これをしっかりと安全保障政策として検討をしていかなければいけないと思います。
憲法九条について今日はいろんな議論がございましたが、この平和安全法制では、憲法九条の専守防衛の下で我が国を防衛するために活動する米軍に対し攻撃があった場合には自衛隊はこれを排除できるということを、従来の憲法論理の中の枠内で決めさせていただいたわけでございます。それは、新三要件です。これによって、まさしく日米同盟の信頼性というのが大きく向上したことは間違いありません。
具体的に申し上げますと、この平和安全法制整備から、日米間の共同訓練もしくは日米プラスアルファの国の共同訓練というのが平時からしっかりとなされるようになりました。私、調べてみたんですけれども、平和安全法制が施行されてからこの二〇二一年の末まで、去年の年末までに、この共同訓練というのが何回されているか。二百八十五回です。平時から日米の共同訓練というのがこのようになされて、それがまさしく抑止力の強化につながっていると思います。
そしてまた、武器等防護という規定を平和安全法制で設けました。これは平時から、グレーゾーン事態から適用になるわけでございますけれども、この米軍の武器等防護をこれまでどの程度やってきたかといいますと、去年でいいますと二十二回、おととしの二〇二〇年は二十五回。
こういう形で日米間の連携が強化をされてきているわけでございまして、私は、今この厳しい安全保障環境を考えたときに、あの平和安全法制を整備したことが間違いなく連携の強化につながり、抑止力の強化につながっているということを改めて確認させていただきたいというふうに思います。
その上で、今日は憲法九条に関する様々な議論がございました。詳しくはまた別の機会にしっかり述べたいと思うんですけれども、自民党の新藤幹事の方からは、九条一項、二項は維持をしていく、堅持をするんだ、また、平和安全法制等で、この九条一項、二項の解釈について、新三要件も含めて、これについても何ら変更を加えるものではないとおっしゃいました。その点については、私も全く同感、同意したい、評価したいと思っております。
その上で、要するに、国防の一番の担い手でございます、最大の担い手である自衛隊についてきちんと憲法上明記すべきではないか、こういう御趣旨だというふうに理解をしたわけでございます。
これはこれまでも何度も申し上げてきましたが、恐らく、ここにいらっしゃる皆様、委員におかれても、自衛隊が憲法違反だと思っていらっしゃる方はごくごく一部だと思うんです。大半の方は、そんなもの、自衛隊は合憲なのは当たり前じゃないかと。皆さんも、国民もそうなんです。自衛隊の活動に対する理解また支持というのは間違いなくある。
そういう中で、自衛隊の明記だけを理由にしてこの憲法九条を改正していこうというのではなくて、私はやはり、憲法価値を高めていくという意味では、自衛隊というのは日本の最大の実力組織であるわけですから、それに対する民主的な統制を憲法上書き込んでいく、これは民主主義、国民主権という観点からも非常に憲法価値にふさわしい書きぶりなんだろうなというふうに思っております。
そういう意味では、自民党の草案の中にある、たたき台の案にある一部は理解できるわけでございますけれども、そう考えたときに、一番のポイントが最大の実力組織に対する民主的統制というふうな観点だとするならば、その憲法上の位置づけは、どこに書き込むことがふさわしいんだろうかというふうに考えておりまして、そういう意味では、自衛隊法の、現在、七条には、「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。」このように書いているわけです。この自衛隊法の七条の、内閣総理大臣が内閣を代表して指揮監督権を有する、これを憲法価値に高めていくという意味は十分理解できると思っておりますが、その位置づけは、恐らく、憲法の七十二条とか七十三条に内閣総理大臣の権限とか内閣の職務について規定を憲法はされているんですね。そこに書き込んでいくということも一つ考えられるのかなというふうに、私は、私個人ですけれども、思っているところでございまして、そうした議論についても是非していただければ。
九条一項、二項については堅持をするという立場の下で、自衛隊の民主的統制をどうしていくのか、こういう観点で議論をしていくことも一つの考え方かなというふうに理解をしております。
いずれにしても、この厳しい安全保障環境の中でどう安全保障政策をつくっていくのかというのは、まさしくこれから、年末の、国家安全保障戦略も含めて三文書のまさしく今見直しをしていこうとしているわけでございまして、しっかり議論をさせていただきたいと思います。以上です。