緊迫の国際情勢と平和安全法制の意義

月刊「潮」7月号【特集】日本政治の焦点 北側一雄副代表インタビュー

緊迫の国際情勢と平和安全法制の意義。
国民の理解を得ながら合意形成を図っていく公明党。
その姿勢のもと、安全保障の議論にも積極的に関わっていく。

北側一雄
公明党副代表、衆議院議員

一九五三年、大阪府生まれ。創価高校卒業。創価大学法学部を第一期生として卒業。八一年四月に弁護士登録。その後、税理士登録。九〇年、三十六歳で衆議院議員に初当選(当選一〇回。現在、大阪一六区)。国土交通大臣・観光立国担当大臣(二〇〇四年九月~〇六年九月)、党政務調査会長、党幹事長などを歴任。現在、公明党副代表・中央幹事会会長を務める。

 日米同盟こそ安全保障の根幹
 二月二十四日以来続いているロシアによるウクライナへの侵略は、国際秩序を蹂躙する断じて許しがたい行為です。第二次世界大戦の教訓に照らし、戦後、国連憲章をはじめとする国際法、平和と安定のための国際秩序が作られました。そうした秩序を一方的にないがしろにし、ウクライナの主権と独立を侵害したことに対して、我々公明党も強く非難しています。
 同時に、他国の主権を侵すことは、侵略を行った国が長年の年月にわたって莫大な代償を払うことを、国際社会は世界に示していかなければなりません。日本政府として勃発直後から国際社会と連携しロシアに対して厳しい経済制裁を実施しています。今は国際社会が足並みを揃え結束していくことが重要です。
 ウクライナ危機を受けて、東アジアでも同様の事態、つまり「力による一方的な現状変更」が起こるのではないかとの不安の声があります。
 核保有国による絶対に許すことのできない暴挙が現実に起きているわけですので、そうした思いを抱かれることは当然です。
 現代の安全保障を考える際に、第一に確認しなければならないことは、一国だけで自国の防衛を担うのは困難な時代を迎えているということです。今日の国際社会にあっては同盟の枠組みによって自国の安全を確保していかなければならないのです。欧州ではNATO(北大西洋条約機構)という同盟体制が築かれています。
 今回のウクライナ危機を受けて安全保障への関心が高まり、様々な観点から議論が起こっておりますが、日本の安全保障の根幹は日米同盟すなわち日米防衛協力体制です。
 実際、日本とウクライナとの明確な違いは、他国との同盟関係が結ばれているかいないかです。もちろん、ウクライナにおいてもこれまで同盟について様々な動きがありましたが、最終的にはNATOの加盟に至りませんでした。ロシアのウクライナ侵略を目の当たりにして、フィンランドやスウェーデンなどの国々は長年の軍事的な中立方針から大きく転換する形でNATOへの加盟を急いでいます。
日本にはすでに日米同盟があります。この日米同盟の信頼性を向上させ、その強化を図り、抑止力を高めていく――これこそが日本の安全保障において最も重要なことです。

日本を取り巻く安全保障環境
 日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しています。
 北朝鮮は、今年に入ってから、かつてない頻度と態様でミサイル発射実験を繰り返しています(五月二十五日現在、一五回)。鉄道や潜水艦などから発射されるミサイル、ロフテッド軌道や変則軌道で飛翔するミサイル、さらには大陸間弾道ミサイル級の長距離ミサイルなど、北朝鮮の核・ミサイル技術は著しく進展しているとみなければなりません。
 中国は、年々国防費を増加させ、今や日本の防衛関係費の四倍となっています。東シナ海や南シナ海で海洋進出を強めていますが、力を背景とした一方的な現状変更の試みとして懸念せざるを得ません。また、台湾海峡での緊張が高まっている状況にも注視していかなくてはなりません。
 ロシアはオホーツク海での海上演習を実施し、北方領土周辺においても最新装備が配備されようとしています。また中国との軍事連携を強化する動きも見られます。
 さらにAIや量子技術などの軍事転用が進み、またサイバーや宇宙などの新領域への対処も必要になってきています。

平和安全法制の今日的意義
 近年の厳しい安全保障環境を踏まえ、徹底した議論の上で二〇一五年九月に制定されたのが平和安全法制(自衛隊法、国際平和協力法、重要影響事態安全確保法など一〇本の関連法改正と、新しく制定した国際平和支援法の合計一一本からなる一連の法律)です。
 私は「安全保障法制整備に関する与党協議会」座長代理として、平和安全法制の成立に向けて尽力してまいりました。当時を振り返ると、野党やメディアなどから「戦争法」という全く根拠のない批判を受け、国論を二分するような大きな議論が巻き起こりました。
 今、改めて思うことは、平和安全法制は我が国の防衛のため、そして日本国民の命と暮らしを守るために本当に必要な法整備であったということです。その意義は、日本の周辺の安全保障環境が当時よりさらに厳しくなっているなかで、正しさが証明されていると思います。
 米軍は日米安全保障条約に基づき、自衛隊と共同で日本の防衛を担っています。その上で、日米同盟における究極の問いは〝日本の防衛のために活動している米軍に何らかの武力攻撃が行われた際、自衛隊がその攻撃を排除できるのかどうか〟です。
 万が一でも起きてはならないことですが、もし、自衛隊が米軍への武力攻撃を排除できる状況にありながら、手出しできない事態が生じてしまえば、日米同盟は成り立たなくなってしまいます。
 ところが、自衛隊がその攻撃を排除できるのかどうかは、〝はっきりしていなかった〟のです。
 そうした現状に対する米国の不満は、前大統領のドナルド・トランプ氏が「米軍が攻撃されても自衛隊は動かない。日本は日米同盟にタダ乗りしている」と発言していたことに象徴されますが、安保タダ乗り論として、以前から水面下でくすぶっていた問題でした。
 その日米同盟における究極の問いに対して、憲法九条のもとで、自衛隊が米軍への武力攻撃を排除することが可能であることを明文化、つまり〝はっきりさせた〟ことが平和安全法制の一番の核心です。
 それによって米国の不満を解消させ、日米同盟の信頼を高めることができました。またトランプ前大統領にも当時の安倍晋三首相がきちんと説明することもできたわけです。

公明党が果たした大きな役割
 平和安全法制の成立にあたっては、我々公明党として大きな役割を果たすことができました。
 先ほど述べたように、平和安全法制の大きな意味は憲法九条の枠内、つまり専守防衛を堅持するなかで、自衛の措置をどこまでとれるのかを突き詰めた点です。それは公明党がいたからこそ実現できました。
 法案作成の前段階として、自民党と公明党で数十回にも及ぶ与党間協議を行いました。その過程で法案の中身を詰めに詰めた議論を幾度となく積み重ねました。
 そうした議論の大きな成果が、平和安全法制での「武力行使の新三要件」です。

「武力行使の新三要件」
①わが国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合

②これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないとき

③必要最小限度の実力を行使 

 憲法九条にかかる従来の政府解釈と論理的整合性をもつ形で新三要件が明文化されました。新三要件に該当すれば、日本防衛のため活動する米軍への武力攻撃を排除できることとなり、一方でもっぱら他国防衛のための自衛の措置が認められないことも明確になりました。
 日本国憲法を貫く平和主義の理念を死守しながら、現実の安全保障上の危機にどう対応していくか――極めて難しい舵取りが求められましたが、自民党と公明党の徹底した議論の積み重ねによって合意形成を成し遂げ、法案成立という形で着地させることができました。自民党からも、公明党との与党協議のおかげで平和安全法制を締まった形でまとめることができたと評価する声は、数多く伝えられました。
 幅広い国民の理解を得ながら議論の着地点を見出し、合意形成を図っていく。これこそが公明党の大きな役割であり、安全保障の議論に関してもこうした姿勢のもとで今後も積極的に関わってまいりたいと思います。
 政府は本年、防衛に関する三つの重要な文書(「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」)を新たに策定する方針を打ち出しています。それに向けて公明党の外交安全保障調査会(会長:佐藤茂樹衆議院議員)も二月から勉強会を開始しています。
 日本を取り巻く国際情勢が激変するなか、日本の防衛戦略を具体的に見直していこうというのは時宜にかなったことであると思います。厳しさを増す安全保障環境に対処するためには防衛力の強化が求められますし、それに必要な防衛費についてはきちんと予算をつけていかなければなりません。
 一方で、真に必要な防衛力の整備については国民の理解を得ながら進めていくという取り組みが重要であると思います。
 ちなみに、日本の防衛関係の当初予算は安全保障環境の変化を受けて、この一〇年近くの間に年々増加しています。二〇一四年度の防衛予算は四兆八八四八億円であったのに対し、二〇二二年度は五兆四〇〇五億円と、この間に五〇〇〇億円強増えているのです。
 また、防衛費に関してはよく諸外国と対GDP比の数字で比較されがちですが、防衛費の金額でいえば、イギリス、ドイツ、フランスなどと同水準であり、決して他の先進国と比べて劣っているということではありません。
 専守防衛と日米同盟を前提としながら必要な防衛力の整備はしっかりと強化してまいります。

深化する日米同盟の抑止力
 平和安全法制によって日米同盟の信頼性は高まり、抑止力は確実に高まっています。平和安全法制が施行された二〇一六年から昨年までの六年間で、日米共同訓練・演習の実施は計二八五回に及んでいます。
▼二〇一六年 二一回
▼二〇一七年 七四回
▼二〇一八年 三六回
▼二〇一九年 三〇回
▼二〇二〇年 四九回
▼二〇二一年 七五回
 日米が綿密な連携のもと訓練・演習を行っていることそのものが抑止力の強化につながっています。
 また、平和安全法制の一環として、自衛隊法を改正して「武器等防護」ができるようになったことも、画期的な変化でした。武器等防護とは、自衛隊の武器(車両や船、飛行機など)が外部から侵害されようとしたときに、人や武器を守る措置のことです。これは自衛権の行使でも武力攻撃でもありません。外部からの侵害を排除し、自分たちの命や装備を守るのは当然の措置だからです。
 日米や多国間での共同訓練の際、武器等防護によって、自衛隊のみならず米軍等の武器等も警護できれば、お互いの信頼関係は大いに高まります。
 平和安全法制を整備して以降、自衛隊は米軍等の艦船や航空機などを守る武器等防護に務めてきました。
▼二〇一七年 二件
▼二〇一八年 一六件
▼二〇一九年 一四件
▼二〇二〇年 二五件
▼二〇二一年 二二件 
 武器等防護の回数は大幅に増えてきています。
 さらにいえば、情報共有の面でも、平和安全法制は大きく寄与しました。米国の人工衛星は全世界をくまなくカバーし、例えば北朝鮮で今どんな動きが起きているかといった情報も、即時にキャッチしています。そうした情報も今や日米で共有できているのです。
 いくら同盟が結ばれているといっても、両国間で信頼関係が築けていなければ、実効的な共同訓練など期待できませんし、情報共有にも支障をきたします。何より、そうした日米関係の綻びを周辺諸国が見過ごすわけがありません。
 平和安全法制の整備によって、平時からの日米間の連携が強化され、武力攻撃には至らないいわゆる「グレーゾーン事態」から有事まで隙間ない対処が可能となりました。 
 ウクライナ危機を受けて、安全保障環境はますます厳しくなっています。
 公明党も「国民の命と暮らしを守る」という信念に立脚し、日米同盟をさらに強化し、抑止力を高めるための議論を政府や自民党とともにしっかりと進めてまいります。 
 一方で、対話による外交的解決を追求してゆかねばなりません。日本外交の基軸は日米同盟ですが、日中の関係も重要な二国間関係です。日本は米国と連携しつつ、米国にはできない外交的役割を果たしてゆかねばならない立場で、公明党もその役割の一端を担ってゆきたいと思います。

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