安保戦略見直し 私はこう考える
反撃能力 精力的に議論
中国の軍事費は一昔前には日本の防衛費の規模と変わらなかったが、今は四倍になった。現行の国家安全保障戦略をつくった九年前と比べ、北朝鮮やロシアも含め東アジアのパワーバランスは大きく変化した。日本も防衛力強化のため、一定の防衛費の増加は避けられない。
どの程度増やすかはこれから検討する。弾薬は不足し、戦闘機や艦船の稼働率も上げないといけない。必要なものを積み上げる。岸田文雄首相も基本的に積み上げだと答弁している。
国民の理解を得るため、財源の議論は避けて通れない。今の経済情勢で増税は容易ではなく、当面は国債を発行するにしても、どう償還していくか明確にしなければいけない。防衛費を国内総生産(GDP)比で一度に2%にまで増やすなんて容易ではない。
敵基地攻撃能力という名称には違和感があった。わが国への武力攻撃が始まったというのが大前提なので、(自民党提言の)反撃能力の方が適切だ。
大きな変化は例えば相手国のミサイル技術の進歩だ。北朝鮮などは変則軌道や長射程のミサイルを持ち、潜水艦など移動式の発射もある。従来のミサイル防衛(MD)では完全に防護できないのではないか。日本も米軍と連携して相手基地などに反撃し、飛んでくるミサイルを減らす能力を持った方が抑止力向上につながるのではないか。これから検討していくが、公明党も問題意識は持っている。
米軍に依存していた「矛」の役割を日本が一部でも担うなら、これまでの防衛政策の転換になるため、国民の理解は不可欠だ。憲法九条、専守防衛の範囲内でやるのは当然で、反撃能力だから(相手国領域の)どこでも撃っていいわけではなく、基地や弾薬保管場所などミサイル発射に関わるところだ。党は参院選後に有識者を交えた議論を始め、年末に向けて政府や自民党と精力的に議論していく。
(聞き手・川田篤志)
プロフィル きたがわ・かずお 衆院大阪16区。現在、衆院議員10期目。公明党副代表、党外交安全保障調査会顧問、党憲法調査会長。小泉内閣で国土交通相を務めた。大阪府出身。創価大卒。69歳。