「反撃能力」対象 必要最小限に

10月20日付読売新聞4面 北側一雄副代表インタビュー

 政府は、防衛力強化に向け、年末までに国家安全保障戦略など3文書を改定し、防衛力整備の内容や予算規模、財源を示す方針だ。平和と安定を維持する抑止力を確保するために、求められる取り組みは何か。公明党の北側一雄副代表に聞いた。

装備拡充 恒久財源で
「反撃能力」対象 必要最小限に

 日本を取り巻く安全保障環境の現状認識は。
北側 非常に厳しさを増している。北朝鮮は極めて差し迫った脅威だ。中国も台湾統一に向け、武力行使の放棄はしないと表明した。中台両国には多くの邦人がいる。経済の結び付きも強い。台湾で紛争が起これば、日本にとって重大な危機となる。軍事力を年々増強する中国に対しても、強い懸念を持たざるを得ない。ロシアも中国と極東で共同演習をしており、隣接しているのは日本だ。安保環境のステージは変わっている。防衛力強化の必要性は高まっている。

 自衛目的でミサイル発射基地などをたたく「反撃能力」を保有すべきか。
北側 憲法9条の下での専守防衛を堅持した上で、抑止力強化のため、能力の一部を保有することは検討されてしかるべきだ。ただ、日本への武力攻撃があることが大前提だ。兆候があるだけで攻撃するのは先制攻撃と言われる可能性が極めて高い。着手したと客観的に言える状況でないといけない。発射技術が高度化し、この見極めが難しい。反撃の対象は、日本への攻撃を排除するための必要最小限であるべきだ。

 政府は、北大西洋条約機構(NATO)基準を参考に、海上保安庁や安全保障に資する研究開発の予算を防衛関係予算として算入することを検討している。
北側 NATO基準も参考にすべきだ。安全保障は防衛省がやっていればいいという時代は終わっている。国全体として安保に資する施策をどのように実施していくか、という広い観点で考えないといけない。国家安全保障戦略で、こうした考え方を明確にすべきだ。
 ウクライナでの戦争を見ても、最先端技術が軍事に転用されている。安保の観点からも技術開発を進める必要がある。港湾や空港も、これまでは自衛隊の利用をあまり考えてきておらず、整備のあり方も課題だ。

防衛費を増額した場合の財源は。
北側 防衛費は恒久的な歳出になる。すべて赤字国債で賄うのは無責任だ。今の経済情勢で、増税は容易ではないが、恒久的な財源を求めないといけない。防衛省の施設整備は建設国債で賄う余地もある。増額に際しては、防衛装備品の高コスト構造も見直さないといけない。装備品は高く、少量生産が多い。防衛省はいかに無駄をなくすかも検討すべきだ。

防衛産業の衰退傾向が続いている。維持・強化に向け、防衛装備品の海外輸出を拡大すべきか。
北側 防衛産業の維持、基盤強化は、防衛力に直結する非常に重要なテーマだ。利益を確保できる仕組みにしていかないといけない。大企業だけ守れば良いわけではない。中小の製造業、町工場など、サプライチェーン(供給網)全体への支援が欠かせない。
 海外移転ルール(防衛装備移転3原則)のある程度の緩和は検討するかもしれないが、基本原則は変えられない。どの国にも売っていいというわけにはいかない。厳格な管理の下、運用を柔軟にする知恵はあってもいいが、自由化をどんどん進めるべきだという話とは違う。(聞き手・森山雄太)

きたがわ・かずお
1990年衆院選で初当選し、10期目。国土交通相や公明党幹事長などを歴任し、現在は党中央幹事会会長を兼務。外交安全保障に関する与党協議会で公明党側のトップを務める。69歳。

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