憲法裁判所の創設には権限、手続きなど制度設計が必要

衆院憲法審査会で北側一雄副代表

憲法裁判所創設には詳細な制度設計が必要
議員任期の延長とは切り離して論議すべき

 公明党の北側一雄です。いかなる緊急事態が発生しても、国会は、唯一の立法機関、全国民を代表する国権の最高機関として、その役割を果たしていかねばなりません。
 そのため、緊急事態において国会機能の維持をどう確保するのかという観点から、当審査会では昨年来論議を積み重ねてまいりました。
 まず、緊急事態が発生し、議場に国会議員が参集するのが困難となった場合にどうするのかが議論され、憲法五十六条一項の「出席」の概念は、例外的にオンラインによる出席も含まれるとの意見が大勢となり、その結果を昨年三月、衆議院議長に報告したことは御承知のとおりでございます。
 次に、大きな論議となっているのは、議員任期満了前若しくは衆議院解散後に緊急事態が発生し、国政選挙の適正な実施が長期間困難と認められるときに、国会の機能を維持するため、憲法を改正して国会議員の任期の延長ができるようにする必要があるのではないかということです。
 緊急事態における議員任期延長の必要不可欠な要件は、国政選挙の適正な実施が長期間困難という選挙困難事態であることです。三月二十三日の審査会で述べましたように、選挙困難事態とは、大規模な自然災害など緊急事態の発生により、選挙の一体性が害されるほど広範な地域において、国政選挙の適正な実施が七十日間を超えて困難であることが明らかであると認められる事態と定義されます。また、選挙困難事態の認定について国会の承認があると、内閣は、速やかに、事態認定の日から最大六か月以内の日に選挙期日を延期し、延期された選挙期日の前日まで議員の任期を延長するとします。
 逆に申し上げますと、当然のことでありますが、どのような緊急事態が発生しようと、選挙困難事態と認定されないのであれば、予定どおり国政選挙を実施するだけで、議員任期の延長という問題は生じません。
 緊急事態においては、内閣に法律に代わる緊急政令を発布する権限を持たせるべきか等のその他の論点がありますが、その当否は別といたしまして、これは議員任期延長の有無に関わらないテーマであることを確認をしたいと思います。
 また、選挙困難事態の認定に係る国会承認の議決要件について、過半数でもよいのではないかとの意見があります。憲法上定められた国会議員の任期は、議会制民主主義の土俵に関わる事柄です。
 衆議院議員は原則四年、参議院議員は六年と憲法上明記されているのは、正当な選挙によって主権者である国民から国政を信託された期間、期限を意味するものです。日本国憲法の前文冒頭にあるとおりです。緊急事態において議員任期の延長を認めるとすると、これはその重大な例外となるもので、やはり国会の承認には各議院の三分の二の特別多数が必要と厳格に考えるのが適切と考えます。
 さらに、国会議員の任期延長の効果をもたらす選挙困難事態の認定には司法の関与が必要との意見があります。まず憲法裁判所を創設し、これを関与させようという考え方があります。しかしながら、憲法裁判所の創設には、その是非自体に多くの論点があります。また、現行憲法の司法権を始め、統治機構に大きな変更をもたらすもので、憲法の改正が当然必要であることは言うまでもありません。さらに、仮に憲法改正をして憲法裁判所を創設することが認められたとしても、その権限の内容、訴訟手続、裁判所の組織、裁判官の資格等、法律等で詳細な制度設計が必要となります。
 議論することは全くやぶさかではございませんが、直ちにその創設ができるものではなく、少なくとも、緊急事態における議員任期延長の課題とは切り離して論議をされるべきと思います。
 次に、現行憲法の違憲審査制度の下で司法の一定の関与ができないかですが、裁判所法三条では、裁判所は、一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において定める権限を有するとあります。選挙訴訟や国民投票無効訴訟のように、別に法律で要件、手続等を定めて法適用の客観的適性を保障しようとするもので、いわゆる客観訴訟と呼ばれています。
 議員任期延長の効果をもたらす選挙困難事態の認定等について、その憲法適合性を直接に争う訴訟類型を法律で創設することは検討できると思います。ただし、選挙困難事態の認定は、内閣が被災状況、復旧状況等の事情を総合的に考慮して国政選挙を適正に実施できるのかという判断であること、また緊急を要する判断であることを鑑みますと、内閣の判断が合理的な裁量の範囲を大きく逸脱し、極めて明白に違憲であると認められる場合に無効となると考えられます。
 また、三月二十三日の審査会で、選挙期日の延期は、同一の事態で、最初の選挙困難事態の認定から通算して一年を超えることはできないとしてはどうかとの私の発言に対しまして、先週、御質問がございました。
 緊急事態の発生により、選挙の適正な実施が長期間困難として、選挙期日の延期、そして議員任期の延長を認めるにしても、一方で、議会の民主的正統性の維持、確保を図っていかねばなりません。国難ともいうべき緊急事態だからこそ、国民の信任が不可欠です。その意味で、同一の緊急事態が継続していても、事態発生から一年の間に選挙ができるようにすべきではないかという趣旨です。
 東日本大震災の際、選挙期日を延期した理由は、有権者である住民が極めて甚大な被害、被災を受け、到底選挙ができる状況ではないということですが、一方で、選挙事務の執行も事実上不可能であったという事情があります。選挙管理委員会や地方公共団体の職員自身が被災者であり、また、被災自治体は、全国の自治体等からの応援も得て、被災者の救助、救援、復旧に懸命に取り組みました。たとえ緊急事態の状況が継続していても、事態発生の初期と一年経過後とでは事情が相当異なっているのではないでしょうか。
 緊急事態の新たな発生があると認められない限り、一年という時間経過がある中で、ネット投票の活用等も含めて選挙を実施しなければならないとすることによって、民主的正統性の維持という要請に応えるべきと考えたところでございます。
以上、本日の私の意見表明といたします。

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