オンライン国会の手続きと条件、早急に整備を

衆院憲法審査会で北側一雄副代表

緊急時、立法機能維持へ
オンライン国会 整備早く

 公明党の北側一雄です。緊急事態条項の創設、特に、緊急事態における国会議員の任期の延長について、昨年来、当審査会で活発に論議されてまいりました。
 衆議院解散後若しくは議員任期満了前に緊急事態が発生し、国政選挙の適正な実施が長期間困難と認められるときに、国会の機能を維持するため、憲法を改正し、国会議員の任期の延長ができるようにすべきであること。そして、その要件、手続、効果等についても具体的な内容についての論議が進められ、五会派では既に共通の理解ができつつあると思います。
 憲法四十一条は、国会は、国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関としています。国会は、いかなる緊急事態が発生しても、必要な法律と予算を審査、成立させ、また、政府を監視、助言をしていくという重要な役割、機能を担っていかねばなりません。緊急事態における国会議員の任期延長論は、まさしく、どんな場合でも国会機能を維持していかねばならない、そのために憲法の改正が必要との議論です。
 また、国会機能の維持という観点から、当審査会では、緊急事態が発生し、議場に国会議員が参集するのが困難となった場合にどうするのかが議論され、憲法五十六条一項の「出席」の概念は、例外的にオンラインによる出席も含まれるとの意見が大勢となり、その結果を昨年三月、衆議院議長に報告したところです。
 それから既に一年以上経過しており、衆議院の議院運営委員会での速やかな検討をお願いしなければなりません。国会法等の改正やシステムの整備などが当然必要となってまいります。
 会長におかれましては、現在の議運での検討状況について、幹事会に御報告をお願いしたいと思います。
 次に、緊急事態によっては、国会での法律の制定や予算の成立を待ついとまがない場合があるのではないか、そのような場合には、国民の生命財産を守るために、内閣に緊急政令制定権や緊急財政処分を行う権限を付与すべきとの意見があります。これは、緊急事態における国会機能の維持という目的とは次元が異なる論点であることをまず確認しておきたいと思います。
 緊急事態における国会機能の維持という観点からは、さきに述べましたとおり、まず、緊急時にオンライン国会が開催できるよう、その手続と条件を早急に整備すべきと思われます。また、緊急事態だからといって、憲法で内閣に白紙委任的な緊急政令制定権を認めることは、国の唯一の立法機関としての国会の責任を放棄することにつながります。
 我が国の危機管理法制は、相当程度整備されています。例えば、現行の災害対策基本法第百九条では、生活必需品の譲渡制限、価格統制、金銭債務の支払い延期等の具体的項目を明示して、内閣に緊急政令制定の権限を与えています。また、国民の権利、自由との関わりでは、災害救助法七条、八条で、医療、土木建築工事又は輸送関係者や近隣住民等の一般国民に対しての従事命令の規定もあります。こうした災害対処法制のほか、感染症の全国的かつ急速な蔓延への対処としての新型インフルエンザ等対策特別措置法、有事の際の武力攻撃事態等対処法、国民保護法などの有事法制、治安上の事態対処のための自衛隊法、警察法などでも政令委任規定があります。
 このように、法律事項として個別に政令委任ができる範囲を規定し、危機管理法制を更に整備、充実していくべきではないかと考えます。
 仮に、緊急事態時における内閣の政令制定権等を憲法に規定するとしても、憲法四十一条の例外規定としての位置づけではなくて、例えば、内閣はあらかじめ法律の定めるところにより法律で定めるところの事項を定める政令を制定し又は財政上の支出その他の処分を行うことができるとの確認規定となるのではないかと考えられます。
 憲法四十一条の、国権の最高機関、国の唯一の立法機関との規定、また、同八十三条以下の財政民主主義の規定は、日本国憲法の基本原理である国民主権の理念を体現したもので、この例外規定を設けることには慎重でなければならないと考えます。
 一九六二年五月、今から六十年以上前になりますが、さきに述べましたように、災害対策基本法を改正し、内閣に一定の緊急政令が制定できる権限が与えられました。この改正法案審議の際、衆議院地方行政委員会では参考人質疑が実施され、東大の小林直樹先生や一橋大の田上穣治先生など、当時の著名な憲法学者が出席されました。法律で緊急政令制定権を内閣に付与することが憲法四十一条に反しないのかがまさしく争点となりました。
 私も、このときの議事録を改めて読ませていただきました。参考人からは、次の理由から、国会の唯一の立法機関性に反せず、違憲ではないとされました。
 第一に、要件が、災害が国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合として限定されていること、第二に、政令に委任する事項が限定されていて、特に経済活動に関することになっていること、第三に、直ちに国会の承認を得なければならないという暫定的な措置であることなどを理由にして、憲法四十一条に反しないというふうにおっしゃっておられます。また、小林参考人からは、このような災害、緊急事態時の緊急政令を認めるからといって、一般的にそういう法形式が合憲であるということではない、そうした趣旨の御発言もございました。
 以上の参考人の意見は、災害対策基本法の改正条項が憲法四十一条に反しないかという憲法解釈のレベルのものですが、憲法政策としても、憲法で内閣に白紙委任的な緊急政令制定権、緊急財政処分権を認めることは、憲法四十一条、また同八十三条などの理念、憲法の価値体系との整合性が取れないのではないかと考えます。
 また、災害、感染症蔓延、戦争、テロなど、緊急事態の要因が異なる中で、政令に委任する事項を憲法で限定して書き込むことは困難と思われます。
 次に、国会法六十八条の三では、「憲法改正原案の発議に当たつては、内容において関連する事項ごとに区分して行う」、また、憲法改正国民投票法四十七条では、「投票は、国民投票に係る憲法改正案ごとに、一人一票に限る。」とあります。
 これは、憲法改正国民投票において、国民の賛成若しくは反対の選択の意思表示が的確にできるようにするためのものです。同じ緊急事態に係る条項といっても、国会議員の任期延長と内閣の緊急政令制定権等とは改正目的の次元が異なるもので、区分されて発議、投票が行われなければならないと考えます。
 日本の国会に当たるウクライナの最高会議では、ウクライナ国民と国際社会にその活動を連日発信しています。議会のホームページは日々更新されていますが、これによると、ロシアがウクライナを侵略した二〇二二年二月二十四日から今日に至るまで、計九百十二件の法律の制定や改正、また議会決議がなされています。ウクライナの国会は、一年以上にわたる戦時下でも、その責任と役割を厳然と果たしております。
 以上、本日の私の意見表明といたします。

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