緊急事態時の国会議員の任期延長
改正条項案のたたき台を作成し、議論深めるべき
参集困難時のオンライン利用した会議出席等の明記を提案
公明党の北側一雄です。
衆議院の憲法審査会では、一昨年、二〇二二年一年間で二十回、昨年、二〇二三年一年間で十九回、この二年で、計三十九回の実質討議を行ってまいりました。委員の皆様の活発な憲法論議に心から敬意を申し上げたいと思います。これからも、毎週の定例日には憲法審査会を開催し、憲法論議を推し進めていくべきと思います。
この三十九回の討議の中では、様々なテーマが取り上げられましたが、特に、緊急事態における議員任期延長問題については、多くの会派の委員から発言がありました。議員任期延長について議論となった審査会の回数は、この三十九回のうち三十三回に及びます。論点は既に出尽くしていると言わなければなりません。
この間、緊急事態条項の論点について、衆議院法制局において、一昨年十二月一日、昨年六月十五日の二度にわたって論点整理をしていただきました。この論点整理を見ても分かるとおり、自民、公明、維新、国民、有志の会の五会派においては、参議院の緊急集会の意義と適用範囲、議員任期延長の必要性、議員任期延長の具体的な要件と効果等について、若干の意見の相違点はあっても、基本的な考え方はほぼ一致しています。
今後の憲法審査会では、緊急事態における議員任期の延長というテーマについて、改正条項案のたたき台を作成し、これを基に議論を深めていくべきと考えます。内容の賛否は別として、その方がより建設的な議論となりますし、仮に懸念される点があっても、より具体的、的確な討議ができるのではないかと思います。
一方、緊急事態における議員任期延長問題に関連して、立憲民主党の考え方について、私からの質問を受けまして、昨年十二月七日の憲法審査会で、今日も御出席をされておられます奥野委員からお答えをいただきました。
奥野委員からは、おおむね次のような発言がありました。
議員任期延長問題について、党内にワーキングチームを設置し、一応の結論を得たとされ、その概要が紹介をされました。公職選挙法に定められた繰延べ投票制度には四つの問題点があることを指摘された上で、被災地以外も含め、一体性が確保できる程度の地域で選挙が実施できる時点まで選挙を延期する。また、衆議院総選挙が延期されている間、参議院の緊急集会での対応を可能とするとともに、従来限定的に解されてきた緊急集会の権限、案件を拡充し、選挙困難事態制度を創設して、参議院の緊急集会に完全な国会機能を与える。
繰り返しますと、第一に、衆議院解散から七十日を超えて選挙の適正な実施が困難な選挙困難事態には、その地域で選挙を延期すること、これは、私どもの言う選挙困難事態があり得ることを認められたと理解できます。そして、第二に、緊急集会の権能を拡充して完全な国会機能を与えることの二点を提案されています。
これは、衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に衆議院議員の総選挙を行うとした憲法五十四条一項や、また二院制を定めた憲法四十二条、両議院の同時活動の原則を定めた五十四条二項などに明らかにそごするもので、私には、共に憲法改正が必要な提案と受け止められます。
以上の私の受け止め、認識は間違っていないのかどうか、その後、この取りまとめはどうなったのか、また、改正の具体的な内容の検討状況について更にどのように進んでいるのか、この審査会に是非お示しをいただきたいと思います。
さきに述べましたように、今後の憲法審査会では、緊急事態における議員任期の延長については、改正条項案のたたき台を作成し、これを基に議論を深めていくべきと考えますが、その作成に当たりましては、他の会派の皆さんとも協議、調整をしまして、たたき台となる案を具体的に提示できるようにしてまいりたいと考えます。その基本的な内容については、二〇二三年六月十五日審査会での論点整理にあるとおりで、詳細は省きますが、五会派間の幾つかの相違点、例えば選挙困難事態の認定に当たっての国会承認の議決要件や司法の関与等については、同じく昨年六月十五日の審査会で私が提案している内容で調整できればと考えております。
さらに、改正条項案の項目に、緊急事態における国会機能の維持という観点から、次の二点を追加できないかと提案をします。共に、憲法解釈が分かれていると思われている事項を憲法に明文化する内容です。
一つは、衆議院議員の任期満了後に総選挙が行われる場合においても、国に緊急の必要があるときは、内閣は参議院の緊急集会を求めることができると明記することです。
もう一つは、オンライン国会です。国会議員が議場に参集することが困難なときは、情報技術通信を利用する方法等で会議に出席することができると明記することです。
各会派においても検討をしていただければと思います。
国民投票制度に関連し、国民投票広報協議会の役割を充実強化していくべきとの意見は、これまでも多くの委員から発言をされているところです。まずは広報協議会規程を策定しなければなりません。昨年十一月二十一日の衆議院憲法審査会の幹事懇で規程案等について協議をいたしましたが、最終的には、両議院の憲法審査会幹事会で協議し、広報協議会規程の成案を得る必要があります。
特に、憲法改正国民投票法が制定された当時はインターネットが現在のように普及されていなかったこともあり、インターネットを活用した情報発信やインターネット広告について国民投票法等には何も書かれておりません。国民投票に当たって、国民に正確な情報を提供することは必要不可欠であり、また、偽情報や誤情報を排除するためにも広報協議会の役割は極めて重要です。憲法審査会の幹事会の下に広報協議会規程の起草委員会を設けて、早急に議論を開始すべきと改めて提案をいたします。以上、私の意見表明といたします。