議員任期延長の要綱案を審査会に示し課題検討を

衆院憲法審査会で北側一雄副代表

緊急時、厳格な要件と手続きのもとで
選挙を延期し、議員任期を延長すべき

 公明党の北側一雄です。
 自民党の中谷幹事から、選挙困難事態における国会機能維持条項について御発言がありました。これまで二年半にわたりまして衆議院憲法審査会で最も集中的に議論されてきたテーマの論点について、自民、公明、維新、国民、有志の会の五会派の意見を集約したもので、中谷幹事の発言内容に全面的に賛同申し上げたいと思います。
 私からは、当審査会で指摘された幾つかの課題について、補足の意見を申し述べます。
 まず、緊急時でも、国政選挙期日の延期ではなく、繰延べ投票で対応できるとの意見があります。公職選挙法五十七条は、天災その他避けることのできない事故により、投票所において投票を行うことができないとき、繰り返しますが、投票所において投票を行うことができないときは、選挙管理委員会は、更に期日を定めて投票を行わせなければならない、この場合において、当該選管は、直ちにその旨を告示するとともに、更に定めた期日を少なくとも二日前に告示しなければならないと規定しております。
 しかしながら、この繰延べ投票制度の想定しているのは、集中豪雨などで地域の限られた投票所で投票できない場合に短期間投票を繰り延べるというものです。私どもの言う選挙困難事態とは、巨大地震の発生など国難とも言える緊急事態時に、選挙の一体性が害されるほどの広範な地域において国政選挙の適正な実施が七十日を超えて困難であることが明らかであると認められる事態をいいます。
 二〇一一年三月の東日本大震災の際は、被災地の岩手県、宮城県、福島県と茨城県水戸市において、四月に予定された統一地方選挙が、繰延べ投票ではなく、特例法の制定により選挙期日が延期されました。当時の投票所の数は、岩手県三十四市町村で一千百三十一か所、宮城県三十五市町村で九百七十三か所、福島県六十市町村で一千三百二十一か所、茨城県水戸市で七十六か所に及びました。合計三千五百一か所の投票所で、選挙期日が最長二百十日延期されたものです。
 また、選挙人である有権者数は、二〇一一年九月当時で、岩手県で百九万七千五十三人、宮城県で百八十九万八千三百十七人、福島県で百六十四万八千百八十七人、茨城県水戸市で二十一万八千七百三十六人、合計四百八十六万二千二百九十三人の有権者数です。これは、繰延べ投票制度の想定する範囲をはるかに超えるものと言わなければなりません。
 ちなみに、選挙困難事態において繰延べ投票を行うとした場合、選挙の告示の日は維持されますから、選挙運動期間は極めて長期となり、選挙運動や政治活動の制限が適用されることになります。これに対して、先週の審査会では、制度の法律改正で対応できるとの意見がありました。しかしながら、長期間投票を繰り延べる場合に選挙運動期間を短縮する旨の法律改正を行うとすれば、それはもはや繰延べ投票ではなく、国政選挙の一部を延期する法律改正であり、憲法五十四条一項との関係でやはり問題があると言わなければなりません。
 次に、国政選挙の一体性について述べます。
 国政選挙は、衆議院選挙、参議院選挙を問わず、同時期に全国で一斉に実施されるのが大原則です。国政選挙の一斉実施原則の趣旨は、その時々の選挙時において国政に係る重要な争点について国民の審判を仰ぐことになるからです。衆議院選挙であれば、そもそも政権の選択が争われますし、国民生活に大きな影響を与える経済政策、税制改正、社会保障改革などの個別の重要政策が争点にもなるでしょう。大災害時には、当然のことながら、災害復旧復興に向けての政府の取組、政策についての評価も争点になります。
 私どもの言う広範な地域で選挙の適正な実施が困難な場合、その地域の選挙期日だけを長期間延期されると、選挙困難な広範な地域の多くの有権者にとって、そのときの争点について投票機会を失うことになり、公平公正な選挙と言えなくなるのではないでしょうか。また、民意を十分に反映した選挙と言えるのかも問題になります。国政選挙全国一斉の原則に反し、選挙の一体性を欠くような状態で実施された国政選挙は、憲法四十四条、十四条一項、十五条から求められる公平公正な選挙の保障に反するおそれがあるとも考えられます。
 次に、選挙困難事態の広範性要件について述べます。
 選挙の一体性が害されるほどの広範な地域の判断基準は、明確に規定しなければなりません。その具体的な基準については、選挙延期の手続を定める法律において規定することになります。
 ここでも、東日本大震災の震災地域の広範さが一つの基準になると思われます。東日本大震災の被災地域では、現在の衆議院選挙制度を前提にすると、比例東北ブロック、比例北関東ブロック、比例南関東ブロックの複数ブロックにまたがる地域で選挙が困難となり、さらに、選挙区選挙では十五選挙区で選挙が困難となります。試算では、総定数の一割を大きく超える六十九名が選出されないという結果となります。
 南海トラフ地震、首都圏直下地震では、東日本大震災に比べ、はるかに広範な地域で選挙が困難となることが想定されます。投票できない有権者数、選出できない議員数も更に多大になります。また、南海トラフ地震、首都圏直下地震のような巨大地震の発生があると、直接の被災地域以外でも、相当な期間、経済活動、社会活動、国民生活等に多大な混乱、影響を与えることも考慮しなければなりません。被災地以外の地域だからといって、適正な選挙が実施できるとは限らないと思われます。
 これまでの当審査会で何度も議論されてきましたが、参議院の緊急集会の意義について申し述べます。
 国会は、二院制が憲法上の大原則です。参議院の緊急集会は、その例外となるものです。憲法五十四条二項、三項に定められた参議院の緊急集会は、参議院の極めて重要な権能ですが、ただ、同条の一項にあるとおり、衆議院解散後四十日以内に総選挙が実施され、その後の三十日以内に召集される国会で新たな衆議院が構成されるまでの一時的、暫定的な権能です。その性格から、当初予算案の議決や条約の承認、内閣総理大臣の指名などはできないと考えられます。
 選挙困難事態が認定されるような国難とも言える緊急事態時には、国民の命と生活を守るために、国会は、平時以上に必要な予算と法律を速やかに成立させるとともに、政府を監視する機能、役割を十全に果たさなければなりません。そのためには、フルスペックの国会であることが求められます。
 そのためには、選挙困難事態における国会機能維持のため、厳格な要件と手続の下、国政選挙の実施を一定期間延期し、その間、国会議員の任期を延長することが必要です。
 この改正条項要綱案を当審査会に示し、具体的にその課題、問題点を検討する時期に至っていると申し上げ、私の意見表明といたします。

党内衆参の意見の違いは十分に調整可能
(他の委員からの質問に答える形で)
 簡潔にお答えいたしたいと思います。幾つか御質問が出ました。
 まず、司法の関与については、先ほども中谷さんからお話がありましたが、これは法的拘束力があるというふうに考えております。選挙困難事態の認定、そしてその承認、手続要件と実体要件について、一見極めて明白にこれは違憲であるという場合には無効として判断される、これは法的拘束力があるというふうに考えております。
 任期延長の期限を一年と限ったのはなぜかという御質問でございますが、緊急事態が発生した当初と一年たった後では、やはり状況は、有権者にとっても、それから選挙事務を執行する立場からも、そしてまた選挙に立候補しようとする方々にとっても、緊急事態の発生時と一年後とでは状況は大分違う。緊急事態の状況が続いていたとしても、やはり一年以内には選挙を実施していくということは、逆に、民主的正統性を図るという観点からは重要ではないかという趣旨でございます。
 解散禁止が規定をされているわけでございますが、一方で、内閣不信任案の提出並びに可決はできるのかという御質問でした。これについては、今日冒頭の中谷さんの話にもあるとおり、内閣不信任案の提出ができないというふうなことにはしないという結論に現時点ではしております。これは内閣不信任案の提出というよりも、むしろ、解散できないわけですから、内閣総辞職決定というか、内閣総辞職の提出、内閣総辞職をすべきという提出案になるのかなというふうには思っております。
 最後に、我が党の衆参の意見の違いのことがございました。参議院側は当然、緊急集会という重要な権能を有しているわけでして、これをしっかりと活用していきたいという立場であるわけで、そこに意見の違いがあるのは、これはやむを得ないと私は思っておりますが、十分に、今も参議院側とは頻繁に意見交換しておりますけれども、十分に意見調整はできると考えております。以上です。

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