“隙間”ない安保法制へ
2014年7月3日 4:15 PM|カテゴリー:北がわニュース
国民守る態勢万全に 憲法の枠内で「新3要件」専守防衛を堅持
———与党協議会座長代理 北側一雄副代表に聞く—————
政府は1日、新しい安全保障法制整備に関する閣議決定を行いました。同決定は自民、公明両党による与党協議会の結果に基づき作られたものです。この協議会で座長代理を務めた公明党の北側一雄副代表(衆院議員)に閣議決定のポイントや党の取り組みについて聞きました。
—新しい安全保障法制整備に関する閣議決定が、なぜ必要だったのでしょうか。
北側一雄副代表 わが国を取り巻く安全保障環境が大きく変化する中で、より厳しさを増していることが一番の原因です。技術革新の急速な進展に伴い、大量破壊兵器や弾道ミサイルなどの開発が進み、拡散しています。テロの脅威も世界中で高まっています。これまでの各国間のパワーバランス(力関係)も変化しています。
こうした中で、国民の命と平和な暮らしを守るための万全の態勢を憲法の枠内でつくっていくことが必要です。さらに、国際社会の中で日本が国際平和協力に積極的に取り組んでいくことが、結果として平和と安定につながると考えました。
—閣議決定に向けて、与党協議ではどんな議論が行われましたか。
北側 与党協議では、(1)武力攻撃に至らない侵害(グレーゾーン事態)への対処(2)PKO(国連平和維持活動)など国際協力をめぐる課題への対応(3)憲法9条下で許容される自衛の措置—について、濃密に議論を行いました。
グレーゾーン事態では、海上保安庁と自衛隊などの連携を強化する方針を確認しました。PKOをめぐっては、武器使用基準を緩和し、離れた場所で活動する民間人らを助けることも可能にしました。
特に焦点となったのは(3)です。ここでは、日本を防衛するための法制上の“隙間”はどこにあるのかという議論に多くの時間を割きました。
日本の防衛は、日米安保条約に基づき、自衛隊と日本に駐留する米軍が平時から共同で活動しています。日本防衛のために活動している米軍が攻撃を受けた場合、自衛隊がその排除のために行動することは、安全保障上必要です。
しかし、現行法では自衛隊が、米軍への攻撃を排除できることが明確な事態は、日本が直接攻撃されている場合に限られています。ここに法制上の“隙間”があります。
この“隙間”を放置していては、日米防衛協力体制の基礎を損ないかねません。そこで、こうした事態に対処する法整備について、従来の憲法解釈下で可能かどうかを検討しました。
その結果、「平時」については、自衛隊法95条の武器等防護の規定を参考にして、わが国防衛に資する活動に現に従事している米軍部隊を守れるという新しい規定を設けることにしました。
日本周辺で紛争が発生するなどわが国の平和と安全に重大な影響を与える事態において、従来の憲法解釈の下では、自衛隊がわが国防衛のために活動している米軍への攻撃を排除できない可能性があります。
そこで、憲法9条下で許される自衛の措置の限界はどこにあるかという議論になりました。
—そうした議論の中で、公明党はどんな役割を果たしましたか。
北側 いくら安全保障上、法整備の必要性があるといっても、それは憲法の枠内でなければいけません。そこで公明党は、従来の政府の憲法解釈との論理的な整合性を確保すべきだと強く主張しました。そうでないと、政権交代のたびに憲法解釈が変更され、憲法の法的安定性が失われるからです。
その結果、安全保障法制の“隙間”を埋めるため、憲法9条の下で認められる武力の行使についての「新3要件」【別掲】を与党協議会としてまとめました。ここで公明党は、従来の憲法解釈との整合性がとれるよう、厳格な歯止めをかけたのです。
—歯止めの内容は。
北側 「新3要件」は、自衛権をめぐる政府見解のベースとなる1972年見解の「(国の)存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることを禁じているとは到底解されない。一方、この自衛の措置は、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて容認される」との論理をそのまま受け継ぐものとしました。
具体的には、第一に、国民の権利が根底から覆される「明白な危険がある場合」に限定しました。第二に「我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないとき」にのみ、自衛の措置をとれるようにしました。あくまでも自国防衛のための措置であることを明確にしました。これにより、専守防衛が堅持されたことは明らかです。
同時に、この「新3要件」を満たした武力行使は、憲法9条下で認められる自衛の措置の限界であり、これ以上の武力行使を可能にするには憲法改正が必要であるということを明確に示しました。
—今回の閣議決定について、「解釈改憲ではないのか」「日本が戦争に参加する国になる」などの指摘がありますが。
北側 解釈改憲とは、政府の解釈によって憲法の規範を変えてしまうことです。今回はあくまでも、政府の憲法解釈の基本的論理や、憲法9条の規範を維持した上で、自国防衛のために許容される自衛の措置としての武力の行使の限界を示したものであり、解釈改憲ではありません。
また、日本が戦争に参加する国になるということも全くの誤解です。今回の一連の議論の目的は、国民の命、平和な暮らしを守るためであり、日本の自国防衛が大前提です。安倍晋三首相が1日の記者会見で、「外国を守るために日本が戦争に巻き込まれることはあり得ない」と明確に述べている通り、これまでと同様、海外で武力行使をすることは全くありません。
≪武力の行使の新3要件≫
憲法第9条の下において認められる「武力の行使」については、
(1)我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
(2)これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
(3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
という三要件に該当する場合の自衛の措置としての「武力の行使」に限られると解する。
(公明新聞ニュースより転載)